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かつしか区民大学講座『今こそ話そう「装飾金めっきの開発物語」~葛飾中堅企業の底力~』

去る7月23日(土)、かつしか区民大学講座『今こそ話そう「装飾金めっきの開発物語」~葛飾中堅企業の底力~』を亀有地区センターで開催いたしました。
本講座は葛飾区内の企業への関心や理解を深めてもらうことを目的として、開発型の優れためっき企業である株式会社ヒキフネの役員の方から業界トップとして発展し続けてきた経緯やめっき加工技術についての講演をしていただきました。
また、今回は講演だけではなく、実際のめっき製品の展示やめっきの実験体験なども盛り込まれていましたので、その内容もご紹介いたします。
なお、本講座は「かつしか区民大学区民運営委員会」の企画・運営で実施しました。
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「装飾金めっきの開発物語」

今回ご講演いただいたのは、株式会社ヒキフネの執行役員技術部長を務める、小林道雄さんです。小林さんはめっき技術の開発業務に40年以上従事され、多くの優れた技術の開発・実用化を果たされてきました。また、平成26年には葛飾区優良技能士に認定され、大学での講師も務められるなど、めっき界の最前線をリードされている方です。

講演では、創業90年を迎えたヒキフネの経営理念や、どのような企業努力があったのかについて、熱いお話がありました。
いくつかの経営理念の中で、今回特に注目したのは「常に新しい価値を創り出す会社であること。」という部分です。

当時のめっき会社では、金属のめっきに使う「めっき液」は他の会社から購入したり、海外から輸入することが多かったそうです。しかしヒキフネでは当時としては画期的な技術部を会社に設置し、「めっき液」を自社で開発することで、購入にかかるコスト削減に成功します。
さらには、長期的にメーカーとして事業を継続していくために、現場だけではなく、研究開発、品質管理にも力を入れていきました。

そして、「新しい価値を創り出す」ためには、情報収集、特に外部からの情報を積極的に集めていくことが大切だそうです。
めっきの技術をどのように応用することができるのか、どこにニーズがあるのか、といったことを知るために、外からの営業やインターネットの問い合わせを待つだけではなく、団体や研究機関に対して能動的に働きかけているそうです。

そうした姿勢を貫く中で生まれたものの中には、一見めっきとは関係がなさそうな驚くべきものもありました。それが各国の国立天文台との共同プロジェクトで開発された中空体*¹によるミリ波の受信体*²です。

*1 中が空洞になっているもののことです(例えばテニスボールなどは中空製品です)。
*2 ここでは、電磁波を広く観測することができる、電波望遠鏡のことを指しています。

これは中空製品を金や金合金で制作する中空電鋳技術を応用したもので、まさしく「めっき」があったからこそできたものです。
また、講演後の質疑応答では、「布や樹脂にもめっきできますか?」という質問に対して、水以外のものであれば、おおよそ全てのものにはめっきできるという驚きの答えもありました。技術的には糸などにもめっきが可能だそうです。

伝統的なめっき技術を大切にしながらも、常に時代に合わせて新しい挑戦を続ける、そんな精神を感じられる素晴らしい講演でした!
小林さん、本当にありがとうございました。


めっきの実験体験

講演後は、参加者も体験できるめっきの実験を行いました。
今回行った実験はチタン板に筆を使ってリン酸水溶液を塗っていき、そこに電圧をかけることで様々な色に発色させる(陽極酸化発色)というものでした。

普段は滅多にできない貴重な体験だけに、皆さん緊張されている様子もありましたが、それぞれが思い思いに絵や文字を描いていました。実は、企画の段階では絵などを描く時間はないかもしれないと想定していたのですが、実際には皆さん素晴らしい作品を作ることができました。それらもひとえにヒキフネの方々の丁寧な説明と参加者の皆さんの熱意の賜物です!

実験体験の様子です。ゴム手袋やゴーグルで安全対策もバッチリです!
参加者の作品の一つです。鮮やかな発色に仕上がっています!

めっき製品の展示

今回の講座では、講演・実験中ともに実際のめっき製品やヒキフネの紹介パネルも展示していました。
講演では、実に様々なものにめっきができるというお話がありましたが、その現物を直に見ることで改めてその凄さを実感できました。

金めっきの製品が勢揃い、豪華絢爛な展示でした!
(聖火リレートーチとその解説パネルは、「郷土と天文の博物館」の所蔵品を使用しました)

どれも見惚れてしまうようなものばかりでしたが、なんとヒキフネでは昨年行われた東京2020オリンピック・パラリンピック聖火リレートーチのエンブレム部分のめっきも行っていたのです。私たちの身近な、よく知っているところでもめっきの技術が活かされていたんですね!

(株)ヒキフネがめっきを行ったエンブレム部分です

最後に

金属のめっき加工というと、なんだか難しそうで普通の人には縁がないのかな、と筆者も思っていましたが、今回の講座を通していかに「めっき」が私たちの身近にあり、生活を支えてくれているかがわかりました。
講座を通して、葛飾区内にある企業について、皆さんがもっともっと興味や関心を持っていただけると嬉しいです。

今回講座にご参加いただいた皆さま、講師をお務めいただいた小林様をはじめ株式会社ヒキフネの皆さま、講座を企画された区民運営委員の皆さまに改めて感謝申し上げます。
そして、最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。
(文:濱田)


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