月を学んでみよう
夜空に輝く月。
私たちにとっては当たり前の光景です。
でも、宇宙的な目で見ると、月は地球の周りを回る「衛星」。
それも、様々な謎と、可能性に満ちた天体です。
月はどうしてできたのか
月は、他の惑星の衛星と比べると、かなり不思議な衛星です。
それは、「大きすぎる」ということ。
月の直径は、地球の直径の1/4ほどありますが、ほかの惑星を回る衛星は、中心の惑星と比べるととても小さいものばかりです。
どうして月が大きいのか。昔からいろいろな説が考え出されました。
ところが、アメリカのアポロ宇宙船が持ち帰った「月の石」や観測データを分析したところ、それまでの説よりもずっと有力で、びっくりするような説が登場しました。
それは「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)説」。
今から46億年前、地球が誕生した直後に、火星くらいの大きさの惑星が地球に衝突、飛び散った岩石やガスが地球の周りを回り、それが集まって月ができた、という説です。
この説なら、月の特徴も、月の石の成分も、きれいに説明できるのです。
さらに、スーパーコンピューターで地球に火星サイズの天体をぶつける実験をしても、やはり月ができることがわかりました。
あの月は、大昔の地球のかけらでできている…と考えながら空を見上げると、ちょっと不思議な気持ちになりますよね!
日本が挑んだ月着陸
そんな月が、いま、世界中の注目を集めています。
アメリカ、旧ソ連だけでなく、中国、インドも探査機を着陸させました。
そして2024年1月、日本も、「SLIM(スリム)」という探査機で月面着陸に挑戦しました。
SLIMは、狙った場所へピンポイントで月着陸を行う技術を確かめるための探査機。カメラで月面を撮影して自分の位置を把握しながら降りていき、障害物があれば自分で考えて避けるという、とても「賢い」探査機です。
着陸後は、月の岩石の成分を分析し、地球の岩石に似ているか、つまり巨大衝突説が正しいかを調べます。
2024年1月20日、SLIMは月へ向かって降り始め、着陸予定時刻には、着陸したことを示すデータも送られてきました。
着陸成功…のはず。
しかし、太陽電池が発電していないことがわかりました。
何か想定外のことが起きているようでした。
SLIMは着陸の直前に、2台の月面探査ロボットを切り離していました。
そのうちの1台、「SORA-Q」という愛称がつけられたロボットは、自分で考えて月面を動きながらSLIMの様子を撮影し、もう1台のロボットと連携して画像を地球に送っていました。
その画像から、SLIMは予定とは違う姿勢になったものの、ピンポイント月面着陸に成功していたことがわかりました。
これが、日本の宇宙開発史の新たな1ページを刻んだ画像です。
月探査の未来
月は、これからの宇宙開発の舞台になります。
アメリカは、日本・欧州・カナダなどとともに、人間を再び月に送る「アルテミス計画」を進めています。日本の宇宙飛行士が月面に立つ日も来るかもしれません。
また、月探査の中継基地として、月を回る軌道に宇宙ステーション「ゲートウェイ」を作る計画も進められています。
中国も、独自に有人月探査計画を進めています。
月には、宇宙飛行士の活動に欠かせない「水」が、氷の形であると考えられています。水があれば、飲み水だけでなく、ロケットの燃料や発電にも使える酸素と水素を作ることができます。
さらに、半導体の材料となるレアメタルをはじめ、様々な資源や、未来の核融合発電の燃料となるヘリウム3もあります。
地球の起源をさぐり、資源を探し、火星などもっと遠くの宇宙に向かうための基地として、月はこれからさらに身近になっていくことでしょう。
ところで現在、かつしか区民大学単位認定講座「超小型変形型月面ロボット SORA-Q開発秘話」の参加者を募集しています。
この記事に登場した「SORA-Q」を開発したのは、葛飾区のおもちゃ会社。
なぜ、おもちゃ会社が宇宙を目指したのか?
宇宙開発で発揮された、おもちゃ会社の意外な強みとは?
SORA-Qプロジェクトのリーダーをお招きしてお話いただきます。
(文:新井)