「生きづらさを抱える子どもを地域で支えるには~葛飾の子どもの声から考える~」 1/29実施報告
2023年1月29日(日)にかつしか区民大学『生きづらさを抱える子どもを地域で支えるには~葛飾の子どもの声から考える~』を亀有地区センターで開催いたしました。
昨今、子どもの貧困は様々なところで問題視されていますが、子どもたちが置かれている現状と、それを支えるためにどのような課題があるのか、といったことを会場の皆さんと一緒に考えました。
なお、本講座は、葛飾区を中心として活動している教育機関・教育関係者が協力して活動する「かつしか子ども・若者応援ネットワーク」の企画・協力いただき開催いたしました。
生きづらさを抱える子どもたち
本講座で講師としてご講演いただいたのは、NPO法人Learning for All(以下LFAと記載)の宇地原 栄斗さんです。宇地原さんは葛飾区エリアマネージャーとして、葛飾の地域の子どもたちの現状を日々目の当たりにしながら、支援活動をされています。今回の講座では、親しみやすい語り口で、データと実体験の双方に基づいた講義をしていただきました。
講義では、はじめに講師の自己紹介とLearning for Allの事業紹介を行ったあと、一本のビデオを視聴して、そこから「子どもの生きづらさ」について簡単なグループトークを行いました。ビデオはYouTubeで一般公開されいて、下記URLからご覧いただけますので、よろしければ読者の皆様も視聴して、ビデオに登場した高校生がどのような生きづらさを抱えているのか考えてみてください。
生きづらさを抱える子どもの根底にあるのは、「子どもの貧困」であるとのことです。「子どもの貧困」とは相対的貧困¹のことを指し、全国で約260万人にものぼり、実に日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあるとされています。
そして、数字だけで考えるのではなく、自身の生活に引きつけて考えるため、ワークシートを使い、例えば一人暮らしの場合、1ヶ月の自分の支出金額を書き出した後、それを合計10万円以内に抑えるためにはどうすればいいのかを考えました²。筆者も実際に行ってみましたが、趣味を我慢すればいいというレベルではなく、今のままではとても生活ができない、と感じさせられました。
※1.その国の年間の手取り金額の中央値(数字を小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値のことです。 例えば「1, 100, 500, 2000, 30000」という5つのデータの場合、中央値は3つ目の「500」です。)の半分以下で暮らしている状態を指します。
※2.世帯人数ごとの金額は次の計算式から求められます。「10×√世帯人数の金額」(例えば2人世帯の場合は、10×√2=14万円となります)
子どもたちへの支援活動
次に、こうした厳しい現状にある子どもたちを支えるため、宇地原さんやLFAの皆さんが行っている支援活動についてのお話がありました。
LFAでは、居場所づくりや学習支援、食事支援をはじめ様々な活動を行い、一人ひとりに寄り添った支援をしているとのことでした。
しかし、「子どもの貧困」の問題を真に解決していくためには、目の前の子どもを支えるだけでなく、社会の構造そのものを変えていくことも同時に必要だということです。そしてそれは1団体だけでできることではないため、地域のあらゆる立場の大人たちとのネットワークや、全国の子ども支援団体とのネットワークづくりを通して、課題の普及啓発等に取り組んでいるということでした。
宇地原さんのお話は最後に「子どもたちは地域で育っていく」という言葉で締めくくられました。「団体による支援活動を通しても何十年も子どもたちとかかわり続けることはできない、だからこそ安心して過ごすことができる地域を作ることが欠かせない」という言葉は、実際に子どもに寄り添い、支えているからこその重みを感じました。
記事には書ききれませんでしたが、他にも子どもたちの事例など、本当に様々な視点からお話をいただきました。
ご参加いただいた方の声
ここで、講座にご参加いただいた方にアンケートでお寄せいただいたお声の一部をご紹介いたします。
豊かな日本でもたくさんの子どもが貧困のためにつらい思いをしている事を知り、個人では解決の出来ない地域社会での取組みが大事であることがわかりました。
葛飾区でこのような活動をされている方がいらっしゃることを知らなかった。具体的にどのような活動をすすめているのか等新たな学びを得ることができた。
まずは地域の大人が交流する場を作ることも必要だというお話はためになりました。
グループでの話ができたことがよかったです。普段なかなか他者の意見を聞くリアルな機会がないので。
いろいろなことは耳にしているが、経験豊かな先生のお話を伺い、これからの活動に少しでも役に立てたらと思います。
まとめ
子どもの貧困の問題は、一朝一夕に答えが見いだせるものではありません。しかし、今回の講座のような場を通して、地域で暮らしている方たちの間に、子どもを支えようとする気持ちが広がっていくことで、地域の中に子どもが安心して過ごせる「居場所」が増えていくのではないでしょうか。
最後に今回講師を務めていただいた宇地原さんに改めて深く感謝申し上げます。
また、講座にご参加いただいた皆様、本記事をお読みいただいた皆様も本当にありがとうございました。
文(濱田)