葛飾の噺家 三遊亭吉馬・仁馬の「笑って学ぶ落語の魅力 リターンズ!」
令和6年7月27日(土)に、かつしか区民大学『葛飾の噺家 三遊亭吉馬・仁馬の「笑って学ぶ落語の魅力 リターンズ!」』を開催。去年好評をいただいた「笑って学ぶ落語の魅力」の内容を一部変え、さらにパワーアップして戻ってきました。
この講座は「かつしか区民大学区民運営委員会」の企画・運営で実施しました。
「葛飾の噺家」のお二人
今年も講師は三遊亭吉馬さん、三遊亭仁馬さんのお二人。五代目三遊亭圓馬門下の兄弟弟子です。
吉馬さんは小菅、仁馬さんは柴又と、お二人とも葛飾区の出身です。
「落語の祖はお坊さんです」「そうですか!」
前半は、「落語入門~これであなたも落語通!」と題して、三遊亭仁馬さんにお話しいただきました。
落語は、「落ちを語る」と書くように、「オチ」がつく話。
その起源は室町時代末期から安土桃山時代にさかのぼります。武将の話相手をしていた「御伽衆」が始まりで、そのひとり、安楽庵策伝という僧侶が落語の祖とされています。彼は1000を超える笑い話をまとめ、それが後の落語の元ネタとなるなど、大きな影響を与えました。
江戸時代中期になると、江戸と大坂で寄席興行が行われるようになりました。江戸落語と上方落語の始まりです。上方落語は大道芸から始まったため、通行人に注目してもらうために賑やかなものとなり、江戸落語とは別の発展を遂げたそうです。
幕末から明治にかけて活躍した三遊亭圓朝は、落語中興の祖と呼ばれています。話が巧くて人気があったため、師匠にまで嫉妬され、寄席では彼のレパートリーを先に演じられて妨害されてしまうことも度々。それならばと数々のオリジナルの落語を生み出して演じるようになりました。それらは現代でも演じられています。
最後に現代の江戸落語界について。三遊亭、柳家、立川など様々な「亭号」、さまざまな団体、そして階級(前座、二ツ目、真打)のお話がありました。
「寄席に行こうかな」「よせやい!」
続いては、寄席についてのお話です。
寄席はなんと年中無休。ひと月を10日ごとに分けて、それぞれ昼と夜に分けて30人以上の芸人が落語をはじめ様々な演芸の公演を行っています。
寄席は太鼓で始まり、太鼓で終わります。
それぞれの太鼓にはちゃんと意味があります。仁馬さんが動画を作って解説してくださいました。
開場の「一番太鼓」の音は、「どんどん、どんと来い」
開演前の「二番太鼓」の音は、「お多福来い来い」
終演時の「追い出し太鼓」の音は、「出てけ、出てけ、出てけ」
説明を聞くと、本当にそう聞こえてくるから不思議です。
さらに、吉馬さんも加わって、いろいろと実演していただきました。
落語の魅力の一つは、噺家の所作。
蕎麦をすする、饅頭を食べる、刀を抜く、そろばんをはじく、盃でお酒を飲む、紙入れからお金を出す…。何もないのにリアルにイメージできるのは、扇子や手ぬぐいをいろいろなものに見立てるだけでなく、目線や細かな動作を緻密に組み合わせて表現しているからなんですね。
前半の最後では、お二人の小噺を通して、サゲ(落ち)のうち「地口落ち」(駄洒落で終わるもの)を体験しました。
落語入門の「講義」でしたが、お二人のお話が上手で、まるで落語を聞いているような感じでひきつけられました。
落語って、シンプルだけど、ものすごく奥の深い世界なんですね。
ちょっと、寄席に行ってみたいな、と思いました。
そしてお待ちかね、落語の時間
後半では、お二人の落語を楽しみました。
三遊亭仁馬さんは、「ぞろぞろ」。
四谷稲荷の門前で茶店を営む老夫婦の話です。茶店は寂れていましたが、ご主人がお稲荷様にお参りに行くと、びっくりするようなご利益が…。
三遊亭吉馬さんは、「ねずみ」。
伝説の彫刻職人・左甚五郎の話です。仙台の宿場町で「鼠屋」という粗末な宿に泊まり、木彫りのネズミを作って店先に置いたところ…。
いずれも有名な古典落語です。興味のある方は検索してみてください。動画がぞろぞろ出てきます。でも、お二人のお話は、それぞれの個性も反映されていてとても新鮮で、最後までねずみ(ねずに)聞くことができました!
企画スタッフに聞く
この講座を企画した、区民から公募された「かつしか区民大学区民運営委員」の継田さんに、この講座にかけた想いをお聞きしました。
葛飾生まれ葛飾育ちで在住という、吉馬さんと仁馬さんの落語を聴く機会があり、お二人の豊かな才能とお人柄に大変惹かれました。そもそも和文化の一つでありながら身近なようで実はあまりよく分からない分野と位置付けられがちな「落語」について、「学ぶ」ことで暮らしに彩りが生まれるのではないか、そんな思いから講師のお二人に講座の打診をしたところ快諾頂きました。
2023年10月に実施した区民運営委員企画講座「笑って学ぶ落語の魅力」は、お蔭様で大変好評でした。年度が替わり委員会で再度企画の話が持ち上がり、定員数も増やして「リターンズ」の実施となりましたが、前回同様、盛況で受講者にも喜んで頂けたこととスタッフ一同感慨を新たにしています。
それもこれもこの講師のお二人あっての「落語講座」でした。講座で使用したテキストも「リターンズ」の為に一新され、講師お二人による太鼓の実演動画も上映されるなど講師の並々ならぬご尽力とそのひたむきなお姿に励まされ私たちスタッフは準備を進めました。その甲斐あり、運営委員は気持ちを一つにし、喜びと感謝の気持ちで当日を乗り切ることが出来ました。
講座は「学び」という軸を据えつつ、後半で実際に落語を二席聴きました。
噺家が声色を使い分け身振り手振りの熱演を繰り広げ、話に引き込まれるうちにその「芸」に鳥肌が立つような瞬間があり、また笑いが巻き起こり、落語の奥深さと永く人々を魅了してきた伝統話芸の底力を目の当たりに致しました。
これをきっかけに、区民の皆様が落語に親しみ寄席に足をお運び頂ければ幸いです。
そして!最後になりますが、吉馬さんと仁馬さんをどうぞ御贔屓に!
参加者アンケートより
最後に、アンケートでいただいた声の一部をご紹介します。
落語の成り立ちを知ることができて楽しかった。
久しぶりに寄席を聞きに行きたくなった。
落語ってこんなに面白いんだと教えていただきました。
地元葛飾の落語家で親しみを感じた。
(文:新井)